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いちご大福

2012/01/23(Mon) 21:04 | Edit
短編ブログ小説

「先輩」
「はい、何でしょう」
 後輩に対してつい敬語になってしまうのは、その後輩がめちゃめちゃ可愛い女の子だからである。小さい顔にきらきらした大きな目か魅力的。
 別にその視線に特別な感情が込められてはいなくても、ただ見つめられるだけでどきどきしてしまう。
 小西さんというそんな女の子が、
「先輩って、好きな人いるんですか?」
 と言うんだからおれは絶句するしかなかった。
 スキナヒトイルンデスカ?
 それってどういう意味?
 そういう意味?
 どぎまぎするおれ。
 ちなみに今は喫茶店のバイト中で、店にはおれと小西さんしか居なかった。
「えーと、いや、あの」
 ぼくの答えを小西さんは、小首を傾げて待っている。
「い、いる、かも?」
「どっちですかぁ?」
 おれの答えに小西さんは少しくちを尖らせてから、
「あたし、実は好きな人がいて」
 とか言い出す。
 もしかして、お、おれ? と思った。もう冷静な思考はできる状態になかった。
「友達とかじゃないんですけど」おれ先輩! 友達ちがう!「ここにバイト来る度に気になってて」そうなのかどうしようか。「わりと年上の人なんですけど」おれ年上ですよー。「なんか対等に話してくれるっていうか」おれいつもキミに敬語だねただ緊張してるだけなんだけどね。「いつも自然体な感じが」自然体だよねおれ自然に緊張してるよね。「好きなんですよね隣のケーキ屋さんの男の人」ズコー!
「そ、そうなんだ」
 勝手に盛り上がって勝手に振られて凹むが、平静を装えるつよいおれ。
「そうなんですよぉー」
「小西さんはよくケーキ買いにいくんですか?」
「その人目当てで……小さいプリンとかも売ってるから、ほぼ毎日かよってて、最近少し太ってきちゃった」
 その柔らかそうなほっぺを両手で支える仕草をする小西さん。なんですか、苺でも中に入ってるですか。可愛い大福め!
「小西さん、太ってないですよ」
「ほんとですかっ」
 ぐっと顔を近づけてくる。
「えっ、あっ」
 どきっとした。やっぱり隣のケーキ屋云々ていうのはおれの反応を見るための方便なのでは!?
「そうだっ、いま隣にその人いるんですけど見てきてくださいよ。おなじ男の人から見た評価ききたいですっ」
 そうやっておれの反応を見るわけね。
 おれは隣のケーキ屋の前に行ってみた。ガラス越しに男性従業員が見えた。長身でイケメン。その上お客と会話しているときの自然な笑顔がとても優しかった。
「見てきたよ」
「どうでしたっ?」
「笑った顔がいいですね」
「そうなんですよー」はあぁ、と熱っぽい吐息を漏らす小西さん。
「応援しますよ」
 おれは短い間に二度と振られて凹んだが、平静を装った。
「応援してくれるんですか? ……あの、じゃあ……」と小西さん。
「? はい」
「先輩のメアド……教えてくれませんか? もしかしたら何か相談させてもらうかも」
 ああー、そういうことね結局おれねまわりくどいことしなくても連絡先なんて交換するのにはいはい相談ねそういうことにしときましょうね!
 と、おれの気持ちはまた盛り上がったが、
「あの、それで、隣のケーキ屋さんに行くことがあったらアノ人に今付き合ってる人がいるか訊いて、あたしにメールして教えてほしいんです」
 そう言う小西さんはずっと、隣にいる想い人の方向を向いていた。
 完全におれのこと見てないな。
 これで三度目。また振られて凹んだ。でも、
「協力しますよ。おれ、甘いもの好きだし」
 小西さんに陰気な顔は見せたくないし、小西さんのつらい顔も見たくないのだ。

 後日、件のケーキ屋でプリンを一個買った。

  小西さん、お疲れさまです(^^)
  例のパティシェさんにきいてみました。
  ちょっと言いにくいんだけど、
  あの人、四年付き合った彼女さんと
  もうすぐ結婚するそうです。
  隣だから当たり前だけど、
  おれや小西さんのこと知ってたよ。
  小西さんのこと、いつも来てくれる
  可愛い女の子って言ってた。
  って、気休めにもならないですよね。
  ごめん。
  ショックだろうけど、
  おれで良かったらぐちくらい聞くからさ、
  またお店で元気な顔見せてください。

 次にバイト先で会ったときにはいつもの小西さんだったが、おれのメールをみた後、けっこう泣いたらしい。

「先輩、ぐち聞いてくれるって言いましたよね」
 おれは小西さんと近場のファミレスに入った。
 そこでひとしきり彼女のぐちを聞いた。あの人をどれだけ想い、そしてどれだけつらかったか。
 それから、話し終えてすっきりした顔になった小西さんがおれに、
「で、先輩には好きな人いるんですか?」
 と言った。
 おれは、
「小西さんです」
 と答えた。
「えっごめんなさい」
 と小西さんは割と即答した。
「…………」
 実際に振られるのがこんなに凹むことだとは思ってなくておれはびっくりした。
 無性に甘いものが食べたくなって、小西さんと別れたあとスーパーでいちご大福を買った。

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