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シューターの憂鬱 大庭サキ編 第2話

2012/02/12(Sun) 23:59 | Edit
連続ブログ小説

 STG「マッスル☆みんち」をプレイするのは大庭サキというシューター。
 ワンコインで次々とステージをクリアし、ほどなくラスボス戦に突入した。
 対峙するのは自機であるチェーンソウを抱えた少女と、牛面人“アルニー・ゴールド知事”。
『合挽きショット!!』
 少女の声がスピーカーから鳴り響き、少女が追尾炸裂型レーザーと一点集中型バルカンを同時に放った。
 瞬間的に高速連射されるそれらの弾丸は、滝のような密度で敵に襲い掛かり、被弾したものを粉微塵にする。
 ザコ敵から回収できるアイテムによりゲージを溜めることで発動が可能となる必殺のショットであった。
《金色の肉体美》の異名をとるラスボスのその美しく逞しい筋肉は、弾丸の嵐にさらされ、間もなく挽肉となった。
 断末魔。血と肉片の雨。

 大庭サキは1クレジットで「マッスル☆みんち」をオールクリアした。
 やり込んでいるとはいえ、このSTGをワンコインクリアするのは並大抵のことではない。その証左としてスコアランキングのネームは全て、大庭サキが入力した「OBA」で埋まっていて、今回のプレイでもネームは入れ変わらず、ただ1位のハイスコアが更新されるだけ。
 そのはずだった。
 ネームを入力し、エンディングをスキップ。
 ランキングが表示される。

  1st 6,118,900 JUN
  2nd 6,012,600 OBA new record !
  3rd 6,007,900 OBA
   ・
   ・
   ・

「なにぃ!」
 サキは思わず立ち上がっていた。
 今回の彼女のスコアは2位だった。
「どこのどいつよ……!」
 JUN。彼女のネームで埋まっていたはずのランキングに紛れ込んだ異物。それも最も気に入らない場所に。
 サキは怒った。まるで自分の居場所を侵害されたような、プライドを踏みにじられたような気分だった。
「いいわ。すぐに解体してやる」
 再度コインを投入する。

 ゲーム・スタート。

  1st 6,120,500 OBA new record !
  2nd 6,118,900 JUN
  3rd 6,012,600 OBA
   ・
   ・
   ・

 怒りで集中力が高まったのか、サキはすぐに1位を取り戻すことができた。
 それでも気に入らない。
 異物が、消えない。
 サキはJUNの名前が消えるまで何度もプレイしようと考えた。しかしそこまで熱くなる自分のこともまた気に入らないのだった。

 翌日。
 ショッピングモール「クレスト」内にあるレストラン「手捏ね食堂 赤い屋根」のバイトを終えたサキは、いつものようにアミューズメントフロアへ。奥へと進み、「マッスル☆みんち」をプレイする。
 カット・アンド・ミンス。彼女のプレイの妙は、敵である異形の畜産動物の肉をいかに効率よく解体するか、いかに大量にその血を浴びるかに集約される。
(ここで出現する豚の群れは、編隊飛行の出鼻をくじくのじゃなくって、少し待ってから一斉に刻んだほうが気持ちいいわね)
(2体同時現れるこの中ボスは、直線状に並んだ瞬間を合挽きショットで打ち抜くと痛快ね)
 サキにとっては性向の赴くまま敵を駆逐しているだけなのだが、それがハイスコアに繋がる。

 そうして、ラスボス“アルニー・ゴールド知事”を血祭りにあげて、オールクリア。
 スタッフロール。そしてスコアランキングが表示される。

  1st 6,141,100 JUN
  2nd 6,126,400 OBA new record ! 
  3rd 6,120,500 OBA 
  4th 6,118,900 JUN
   ・
   ・
 
「なっ……! くそっ、またJUN!?」
 今回のサキのスコアは2位であった。しかし自己ベストである。
「なんなのこいつは! あたしにSTGでケンカ売るっていうの?」
 冷静に考えれば、腕のあるシューターがたまたまこの筐体を見つけ連日プレイしていったという、それだけのことである。
 熱くなっているとはいえサキにもそれはわかっていた。しかし――
(なんだかこいつは、あたしを挑発している気がする……)
 思わず爪を噛んでしまう。
 この日も、もうワンコインだけプレイ。
 驚異的な集中力でさらにハイスコアを更新。1位を奪還した。
 それでもやはり、どこかもやもやしたものが胸中に残った。

 翌日。
 バイトは休みだが。つい足がクレストのアミューズメントフロアに向く。
 気付けば「マッスル☆みんち」の筐体の前に立っている。
 オールクリア。
 そしてランキング画面。
 ぎりっ、と歯が鳴る。
 今回もサキは自己ベストを更新した。昨日のJUNより上のスコアだ。
 しかし、また、ランキングの1位には、さらに高いスコアとJUNというネームがあった。

 そんなことをその翌日も翌々日も繰り返した。JUNのハイスコアをサキが塗り変えたと思ったらそこにはさらに上を行くJUNのスコアが登録されている。
 そのたびにサキの怒りは大きくなっていく。
「ああああーーーーっ! くそっ、くそくそくそ! むかつくのよなんのつもり!? こそこそしやがってこの馬鹿が! ああ、いらいらする何なの何だっていうのよっ!!」
 周りの目も気にせず、わめき散らした。
 クレストの警備員に注意された。

 そしてそのイタチごっこが10回を数えたあたりで、サキは、きれた。
「……ふっ、ふふふふふふ、ふふ、ふふふふふふふふふふふ……」
 思わず笑いが込み上げてきて、サキ自身驚いた。
(いいわ……わかった)
 手が震える。
「やる気なのね」
 いまにも筐体のディスプレイを叩き割ってしまいたい衝動に駆られた。
(こいつは、JUNというやつは、徹底的に挑戦してきている)
 それを必死で押さえこむ。怒りは、いま爆発させるべきじゃない。
「望むところよ」
 それを向ける対象は、JUNとかいうシューター。
(あたしもシューターのはしくれなんだ。目の前に立ちふさがるやつは)
「解体してすり潰す」

 サキは立ち上がり、両替機に向かった。

   つづく

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